離婚交渉|離婚条件に関する注意点や弁護士に交渉を依頼するメリットを解説

2023年09月28日
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離婚交渉|離婚条件に関する注意点や弁護士に交渉を依頼するメリットを解説

静岡市が公表している統計資料によると、令和3年の静岡市内における離婚件数は977件でした。離婚件数および離婚率はともに減少傾向にありますが、それでも、静岡市では毎年一定数の夫婦が離婚という決断をしていることがわかります。

夫婦が離婚する際には、離婚するかどうかに加えて、慰謝料、財産分与、親権、養育費などの様々な事項についても話し合い、それぞれ条件を決めていく必要があります。適切な条件で離婚するためには、それぞれの事項についての判断の際に注意すべきポイントをしっかりと理解しておくことが大切です。

本コラムでは、離婚の条件交渉における注意点や弁護士に離婚交渉を依頼するメリットについて、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚に向けて条件交渉が必要となる7つのこと

離婚時に、条件交渉が必要となる代表的な7つの事項をご紹介します。

  1. (1)親権

    夫婦に、未成年の子どもがいる場合には、離婚時に、父親と母親のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
    また、実際に子どもと同居して養育・監護する者も、親権と同時に決めることが望ましいといえます。一般的には、親権を獲得した親が子どもと同居して、養育・監護をすることが多いです

  2. (2)面会交流

    子どもと同居し養育・監護することができなかった親(非監護親)は、面会交流によって離婚後も定期的に子どもと会ったり、手紙のやり取りをしたりすることができます。
    ご自身が親権を獲得することが難しい状況である場合には、面会交流の内容を充実させる方向で話しを進めていくとよいでしょう。

  3. (3)養育費

    養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用のことで、親が子どもの生活を保持するために支払うものです。
    養育費の金額は夫婦の話し合いによって決めることもできますが、判断の目安として、裁判所が公表している養育費の算定表を利用することもできます
    いつまで養育費の支払いを続けるかは、家庭環境や親の資力、学歴などに応じて変わってきますが、子どもの成人時や高校・大学等の卒業時までとすることが多いです。

  4. (4)婚姻費用

    婚姻費用とは、婚姻生活を維持するために必要となる費用をいいます。
    離婚するまでは、別居をしていても夫婦であることには変わりありませんので、夫婦のうち収入の多い配偶者が少ない配偶者に対して、子どもの生活費も考慮したうえで、婚姻費用を支払う必要があります。
    特に、婚姻費用を払う義務のある者が生活費を支払っていない場合や、離婚のための交渉が長引きそうな場合などは、婚姻費用についても決めておくことが望ましいです
    婚姻費用の金額も夫婦の話し合いによって決めることができますが、判断の目安として裁判所が公表している婚姻費用の算定表を利用することもできます。

  5. (5)財産分与

    婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産については、名義に関わりなく財産分与によって分けることができます。
    財産分与の割合は、基本的には2分の1です
    これは、片方が専業主婦(主夫)であり収入のない家庭であっても変わりありません。
    財産分与について交渉をする際には、まずはお互いの財産をもれなくリストアップすることが大切です。
    将来受け取る予定の退職金なども、財産分与の対象となることがあります。
    また、相手が財産を隠している疑いがある場合には、弁護士に相談したり、裁判所の調査嘱託などの手続きを利用したりすることも検討しましょう。

  6. (6)年金分割

    年金分割は、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。
    年金分割には、合意分割制度と3号分割制度があり、どちらの手続きを行うかは人によって異なります。まずは一度、年金事務所に問い合わせるとよいでしょう。

  7. (7)慰謝料

    配偶者による不貞行為や暴力など、離婚に至る原因が相手方配偶者の側にあった場合には、相手方に対して慰謝料を請求することができます。
    実際に、相手方から慰謝料の支払いを受けるためには、金額や支払方法(一括払い、分割払いなど)を話し合い、互いに合意する必要があります。

2、離婚の条件交渉で注意するべき5つのこと

離婚時の条件交渉では、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)希望する離婚条件を整理しておく

    離婚時に決めるべき離婚条件には、さまざまなものがあります。
    希望する離婚条件の整理をせずにいきなり離婚を切り出したとしても、何から話し合えばよいかわからず、離婚の条件交渉が難航する可能性があるでしょう。
    スムーズに離婚の条件交渉を進めるためにも、希望する離婚条件はあらかじめ明確にしておくことが大切です。

  2. (2)離婚を切り出すタイミング

    離婚を切り出すタイミングは人それぞれですが、離婚後の生活拠点と生計を確保してから切り出したほうがよいといえます
    離婚後、夫婦は別々に生活することになりますが、離婚後の生活拠点が決まっていないと、離婚後もしばらくは元配偶者と同居しなければならないという気まずい思いをしたり、生活の拠点を失ったりすることもあります。
    また、専業主婦・主夫の方は、仕事を見つけなければ、離婚後の生活が困難になるでしょう。
    離婚してから仕事を探してもなかなか新しい職が見つからず、当面の生活費にも困ってしまうことになるおそれがあるので、新しい仕事は離婚する前から早めに探すようにしましょう。

  3. (3)感情的にならず相手の話にも耳を傾ける

    夫婦で離婚の話し合いをしていると、どうしても互いに感情的になってしまいがちです。
    しかし、夫婦げんかになってしまったら離婚のための交渉を進めることができず、話し合いが長期化してしまうおそれがあります。
    相手から嫌なことを言われたとしてもすぐに感情的になるのではなく、気持ちを落ち着かせて相手の話にも耳を傾けるようにしましょう。

  4. (4)慰謝料を請求するなら証拠が重要

    離婚時に慰謝料を請求する場合には、相手の有責性を裏付ける証拠が必要になります。
    証拠がない状態で慰謝料を請求しても、有責性を否定されてしまったり、必要な証拠を隠滅されたりしてしまうおそれがあるという点に注意してください。

  5. (5)合意した離婚条件は公正証書に残す

    離婚の合意に至った場合には、夫婦間で合意した離婚条件については、かならず離婚協議書として、書面で残しておきましょう。

    また、離婚協議書を書面で残すだけではなく、一歩進んで、公正証書の形式にしておくことをおすすめします。
    離婚時の条件で、養育費や慰謝料など金銭の支払いに関する合意をしただけでは、将来、相手が支払いを怠るリスクがあります。
    しかし、公正証書にして一定の形式を満たすことで、相手が支払いを怠ったときは直ちに強制執行をして、相手の財産を差し押さえて回収していくことが可能になります。

3、離婚の条件交渉を弁護士に依頼するメリット

離婚交渉を弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  1. (1)条件交渉で相手と顔を合わせる必要がなくなる

    離婚交渉をする際には、まずは相手との話し合いが必要になります。
    しかし、離婚の危機に直面した夫婦は、お互いの関係性が悪化しており、直接顔を合わせて話し合いをすることが難しいということもあるでしょう。
    そのような状況で二人だけで話し合いをしようとしても、互いに感情的になってしまい夫婦げんかに発展するおそれがあります

    弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人となって相手との交渉を行います。
    相手と直接に顔を合わせる必要がなくなるため、冷静に交渉を進めることができるでしょう。

  2. (2)適切な条件で離婚することができる

    離婚時には、離婚の合意の他にも、上述したように、さまざまな事項について相手と取り決めをする必要があります。
    また、慰謝料、養育費、面会交流など取り決める事項によって、考慮するべき事情が異なってくるため、離婚に関する法的知識や経験がなければ適切な条件で合意することは困難です
    専門家である弁護士に依頼すれば、適切な条件による離婚を成立させやすくなります。

  3. (3)合意書の作成もサポートしてもらえる

    離婚やその条件に関して合意に至った場合には、その内容を離婚協議書にまとめる必要があります。
    口頭での合意だけで終わらせてしまうと、後になって、取り決めの内容に関して互いの意見が食い違いトラブルになってしまう可能性があるためです。
    弁護士に依頼をすれば、離婚協議書から公正証書の作成まで、幅広くサポートを受けることができます

4、話し合いで離婚が成立しない場合の離婚方法

夫婦の話し合いでは離婚が成立しない場合には、以下のような方法で離婚を進めていきます。

  1. (1)離婚調停

    離婚調停とは、家庭裁判所の裁判官および調停委員が夫婦の間に入って、離婚に関する話し合いを調整してくれる手続きです。
    知識や経験を有する第三者が間に入ってくれますので、当事者だけで話し合いをするよりも冷静かつスムーズな話し合いが期待できます。

    離婚調停は、基本的には話し合いの手続きになるため、弁護士に頼まずご本人のみで手続きを進めることができます。
    しかし、裁判所という不慣れな場所で面識のない調停委員を相手にしなければならないため緊張や不安から伝えたいことが十分に伝えきれない可能性もあります。
    弁護士に依頼をすれば、調停の申立てだけでなく、実際の調停期日に同行してもらい、自分の主張をしっかりと伝えることができます

  2. (2)離婚訴訟

    離婚調停は、あくまでも話し合いの手続きであるため、離婚や離婚条件について合意に至らない場合には調停不成立となります。
    もし調停が不成立になっても離婚を求める場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して離婚を求めていきます。

    離婚訴訟では、配偶者同士の話し合いに基づく協議離婚や離婚調停とは異なり、裁判所が夫婦を離婚させるかどうかを決めます。
    したがって、相手が離婚を拒否していても、裁判所が認めれば離婚が成立します
    ただし、裁判所に離婚を認めてもらうためには、少なくとも、以下の「法定の離婚事由」の①から⑤のいずれかが必要となります。

    1. 民法第770条1項
    2. ① 配偶者に不貞な行為があったとき。
    3. ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
    4. ③ 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
    5. ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
    6. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。


    そこで、離婚訴訟をお考えの方は、まずは弁護士に相談して、①から⑤があるのか、裏付けとなる証拠はあるのかなど、訴訟の見通しを助言してもらうとよいでしょう。
    また、訴訟は専門的な手続きが多いため、弁護士のサポートを得ることはとても重要です

5、まとめ

離婚の際には、離婚の他にも決めなければならないことが多数でてきます。
しかし、当事者同士で話し合いを進めると互いに感情的になってしまい、いつまでも交渉が成立しないおそれがあります。
また、離婚条件についてどのように判断すればいいかがわからず、相手から提示された不利な条件に応じてしまうおそれもあるのです。

これらのリスクを少しでも軽減するために、離婚交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
配偶者との離婚を検討されている方や、離婚交渉がなかなか進まずに悩まれている方は、まずはベリーベスト法律事務所 静岡オフィスまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています