盗撮でも後日逮捕はあり得る? 逮捕前からできること

2019年01月15日
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盗撮でも後日逮捕はあり得る? 逮捕前からできること

盗撮事件は電車や駅、街中でも起こります。静岡県静岡市でも、女性のスカート内を葵区の地下道階段で盗撮したことが発覚した静岡県職員が、罰金刑に処された事件が起きました。該当の職員は有罪となった翌月には懲戒免職処分を受けています。

犯行現場で盗撮の事実が発覚していなくても、逮捕されていた可能性はあるのでしょうか。今回は、盗撮によって後日逮捕される可能性や、逮捕される前にすべきことについてご案内します。

1、盗撮によって後日逮捕される可能性は?

冒頭の事件では駅員によって盗撮行為が発見されたことをきっかけに、2件の盗撮行為が発覚しています。

盗撮行為によって問われる罪と、逮捕される可能性について知っておきましょう。

  1. (1)盗撮行為で問われる罪

    盗撮行為は、状況や被写体、盗撮した画像やデータをどのように扱うかによって問われる罪が異なります。

    ●迷惑防止条例違反
    盗撮行為の多くは、迷惑防止条例違反として取り締まりを受けることになります。迷惑防止条例とは、公衆に著しく迷惑をかける行為などを防止することを目的に各都道府県に設置されている条例の総称で、静岡県版の正式名称は「静岡県迷惑行為等防止条例」です。

    静岡県の迷惑防止条例では、第3条第1項(3)から(4)と、第3条第2項において盗撮を禁じています。具体的には、以下のような行為が迷惑防止条例違反として取り締まりを受ける可能性があります。

    <公共の場所または乗り物での行為>
    • 他人の下着などを見る目的で撮影すること、撮影機器を下着などに向けること
    • 下着を見たり映像を記録する目的で、透かし見が可能な機器を設置したり人の体に向けたりすること


    <住居・浴場・更衣所・トイレなどでの行為>
    • 通常人が衣服の一部もしくは全部を着けない場所での盗撮


    迷惑防止条例違反で有罪となったときは、「6ヶ月以下の懲役」または 「50 万円以下の罰金」の範囲で刑罰に処されることになります。ただし、犯行を繰り返していた「常習」犯と評価されると、刑罰はさらに重くなります。

    ●軽犯罪法違反
    盗撮行為は、状況に応じて軽犯罪法違反として罰せられることもあるでしょう。

    軽犯罪法では、盗撮という行為を直接禁じているわけではありません。「のぞき見」を取り締まりの対象としているため、盗撮行為がのぞき見と評価され、処罰の対象となります。

    有罪となれば、1日以上30日未満の期間拘束される「拘留」または1000円以上1万円未満以下の金銭を支払う「科料」が科されます。

    ●そのほかの犯罪
    盗撮を行う過程で行われた特定の行為が、別の犯罪行為にあたることもあります。たとえば、盗撮行為をするために他人の家やトイレなどに無断で侵入していれば、刑法犯の住居侵入罪に問われる可能性もあるでしょう。

    また、被害者が18歳未満の子どもであるときは、児童ポルノ法違反に問われることもあります。

  2. (2)事件化の可能性

    盗撮行為が発覚した場合、逮捕されることも十分ありえます。
    そもそも「逮捕」とは、逃亡や証拠隠滅の可能性がある被疑者に対して捜査を行うため、身柄を拘束する行為を指します。よって捜査に必要な特別な措置として、その方法から根拠、期間に至るまで刑事訴訟法で定められています。

    ●通常逮捕
    原則、警察が逮捕を行うには、逮捕状が必要です。そして、逮捕状を発付されるためには、罪を犯したことを疑うに足りる理由と、なぜ逮捕が必要なのかなどの根拠などをそろえ、裁判所へ逮捕状を請求する必要があるのです。つまり、当日逮捕されなくても、逮捕状が発付されれば、後日逮捕されることがあります。

    ●現行犯逮捕
    他方、犯行中や犯行直後に身柄を拘束することを、「現行犯逮捕」と呼びます。罪を犯していることが明らかであるため、逮捕状がなくても、警察官でなくとも現行犯逮捕を行うことができる点が大きな違いです。

    ●「逮捕」はされずに捜査を受けるケース
    盗撮行為を警察が認知しても、多くのケースでは「逮捕」する前に、警察による事情聴取などが行われます。そこで罪を認め、逃亡や証拠隠滅の可能性が低いとみなされれば、留置場で寝泊まりする必要がある「逮捕」という身柄が拘束される措置を回避した状態で、盗撮事件が扱われる可能性が高いでしょう。

2、後日逮捕するとき、警察はどのように動くのか

前述のとおり、盗撮行為を目撃されたにもかかわらず逃亡したケースや、防犯カメラなどに盗撮の様子が残されているケースでは、後日に逮捕される可能性があります。

犯行後日に逮捕される「通常逮捕」が行われるときは、犯行からある程度の時間を要します。どれだけの期間がかかるのかは事件の内容にもより、一概にはいえません。「犯行当日に逮捕されなければ罪を問われることはない」ということではありません。

  1. (1)警察から連絡がきたらどうすべきか

    盗撮行為から半年も経つと、逮捕の可能性など忘れているころかもしれません。しかし、捜査が進められていた場合、ある日突然家に警察がやってきたり電話がかかってきたりして、任意の事情聴取を求められることになります。

    なお、もし盗撮の現場で警察に連れていかれたとしても、必ずしも現行犯逮捕されるわけではありません。呼び止められたものの釈放されることもありますが、このケースでも後日になって、任意の出頭・事情聴取を求められる可能性が高いと考えてよいでしょう。

    本来、任意の聴取であるため拒否するのは自由です。しかしながら、任意の出頭・事情聴取を正当な理由なく拒否し続けると、そのこと自体から証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されてしまって、「逮捕」が認められ、身柄の拘束を受ける可能性が高まります。

  2. (2)逮捕されたらどうなるのか?

    任意聴取などを拒否し続けた、現場から逃走したなどの理由で逮捕されてしまったら、まずは留置場などに拘束され、警察による事情聴取を受けることになります。警察は、逮捕から48時間以内に事件や被疑者の身柄を検察に送るかどうかを判断します。

    検察に身柄ごと事件が送致されたら、送致を受けた検察はさらに24時間以内に、引き続き身柄を拘束して取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」の必要性を判断します。必要と判断したときは裁判所へ「勾留請求」を行い、裁判所が勾留を認めれば、延長を含めて最大20日にわたって身柄を拘束される可能性があります。

    逮捕された場合は、まずは勾留が決まるまで、最長72時間の身柄の拘束を受けます。さらにこの間は、家族や友人へ個人的な連絡をすることはできません。面会できるのは、弁護士だけです。

    また、勾留が決まれば、逮捕から最長23日間も身柄の拘束を受けることになるため、仕事や学業などへの影響がさらに大きくなります。

3、逮捕前にできること

盗撮をしてしまい、反省をしているのであれば、いち早く日常を取り戻すため、長期にわたる身柄の拘束を回避し、可能であれば前科がつくことを避けるため、何らかの対策を行う必要があるといえます。しかし、個人でこれらの対応を行うことは非常に難しいでしょう。まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)自首

    盗撮してしまった場合、少しでも罪を軽くする方法として「自首」があります。
    もっとも、「自首」にする任意的な減刑は、盗撮自体が発覚していないか、盗撮が行われたことは発覚しているものの犯人がだれであるか発覚していないことが必要です。

    「自首」以外にも逮捕前にできる対策があります。自首を選択するときも、まずは弁護士を頼ってみてはいかがでしょうか。状況に応じて自分が取るべき行動のアドバイスを得るだけでなく、警察へ行く際に同行するよう依頼することもできます。

  2. (2)被害者との示談交渉

    盗撮に限らず、被害者が存在する場合、警察や検察は、被害者の処罰感情を非常に重視します。そこで、「示談」という手段を取ることができます。

    示談とは、盗撮等の犯罪被害を受けたことなどに基づく民事的な賠償について、当事者間で一定の内容で解決することを合意することです。多くの場合、加害者は被害者に対して謝罪と賠償を行う代わりに、被害者には示談書の中に「処罰を望まない」「犯人を許した」といった「宥恕(ゆうじょ)文言」を記載してもらいます。

    もっとも、盗撮をした本人やその家族が示談交渉しようとしても、相手に恐怖や反発心を与える可能性が高く、逆効果となりやすいものです。成立させることは非常に難しく、また逮捕されてしまった後では、あなた自身が動くこともできません。

    そこで、逮捕されてから面会をすることができる弁護士に相談し、解決を目指すことをおすすめします。相手が知り合いではないケースでも、弁護士を通すことで被害者と示談交渉できることがありますし、示談も成立しやすくなります。

    示談成立のタイミングが早ければ、そもそも被害届が提出されなかったり、長期にわたる身柄の拘束を回避できたりするなど、そのメリットは大きくなります。

4、まとめ

盗撮は、当然のことながら刑事事件として罪が問われることになる行為です。現行犯逮捕をされなかったからといっても、後日になって逮捕をされることもあるでしょう。

おひとりで悩むのではなく、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスにご相談・ご依頼いただければ、状況に適したアドバイスや示談交渉、さらには弁護活動を行います。お困りの際は、ぜひお早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています