正しい遺言書の書き方とは? 無効となるケースや注意点を紹介

2019年01月08日
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正しい遺言書の書き方とは? 無効となるケースや注意点を紹介

静岡県静岡市の人口のうち、65歳以上の「老年人口」の方の割合が28.4%と高齢化が進んでいます。これらのことが関係しているのか、市でも頻繁に終活セミナーなどが開催され、遺言書の書き方などを伝えているようです。

相続がはじまった途端、大きな財産がなくても、相続人間でトラブルが生じるケースは少なくありません。また、生涯をかけて守り抜いてきた土地などが、誰にも気づかれずに放置されてしまう事態は避けたいところです。

そのような事態を避けるには、遺言書を作成しておくことが非常に重要です。今回は、遺言書の書き方や種類などを中心に、弁護士が解説します。

1、遺言を行うメリット

相続は、他界した瞬間から始まります。よって、意思をその場で伝えることができません。もし、メモ書きを残していたとしても、本人が書いたものと証明することは難しいでしょう。そこで、民法では、法的な効力を持つ遺言書の書き方を定めることによって、本人の意向に沿った相続が行われるよう定めています。

遺言書を作成することには、以下のようなメリットがあります。

  1. (1)自分で思うように財産を分配することが可能

    まず、大前提として、遺言がなくても相続は行われます。遺言書がないときは、相続人が集まり、話し合いを通じて遺産の分配方法を決めていくことになります。この話し合いを、「遺産分割協議」と呼びます。

    遺産分割協議を行う際は、原則的には、民法で定められた「法定相続分」を基準に話し合っていくことになります。民法では、故人が特に指定していなくても相続を受けることになる「法定相続人」と、分配割合がすでに定められているのです。

    しかし、あなた自身が、世話になった人物により多く遺産を渡したいと考えることもあるでしょう。遺言には、相続したい相手とその割合を指定できるという、もっとも大きなメリットがあります。

  2. (2)遺された家族が相続でもめるのを防ぐ

    相続では、家族や親族がもめてしまうケースが多々あります。すべての財産について一族全員が同じ認識があるとは限らず、土地建物があればすべて平等に分け合うことは難しいためです。さらに、誰かが「もっと財産があるはずだ」などと疑い始めてしまえば、終わりのないもめ事になってしまう可能性もあるでしょう。

    一般的に遺言書では、あなたが所有する財産をすべて明らかにしたうえで、分配方法や割合を指定します。無用なもめ事を事前に防ぐことができる可能性が高まります。

    遺産の分配方法や受け取ってほしい相手を指定するとともに、「付言事項」へ「なぜそうしたか」などの気持ちを書き遺しておくこともできまず。のこされた家族に気持ちが伝われば、より良好な関係を保つことができるでしょう。

  3. (3)法定相続人以外にも財産を分けることができる

    法定相続分が定められているため、遺言がなくても配偶者や子どもなど、身近な家族であれば、相続によって遺産を受け取れるケースがほとんどです。しかし、遺言に記しておくことによって、親族以外でも自身を支えてくれた人物に財産を分けることができます。

2、遺言書の種類とその書き方

通常は3種類の「普通方式」のいずれかで遺言書を作成しますが、特殊な状況下では「特別方式」による遺言も認められています。

普通方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種があり、それぞれメリットとデメリットがあります。

  1. (1)自筆証書遺言

    もっとも手軽に作成できるのがこの自筆証書遺言です。自分ひとりで作成することができますが、民法第968条に定められた要式を満たす必要があります。

    具体的には、全文と、日付および氏名を自筆し、押印します。費用もかからず手軽に書き始めることができるというメリットがありますが、内容の確認がなされず、自ら保管する必要があるため、記載ミスや紛失や改ざんなどの懸念があります。また、開封時には裁判所の検認手続きが必須です。

    自筆証書遺言では、財産目録も含めたすべてを手書きであることが求められています。そのため、間違いのない遺言書を作成しようとすると、大変な手間がかかるものでした。
    しかし、平成30年に可決した法改正によって、平成31年の施行日以降に作成する自筆証書遺言書であれば、財産目録部分についてパソコンでの作成が認められるようになる予定です。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言は、民法第969条で定められている、証人2人以上の立ち会いのもと、公証人によって遺言書を作成してもらい、公証人役場へ保管がなされる遺言方式です。公証人によるチェックが入るため、法的に無効になるような記載ミスが起こりづらく、公証人役場に遺言書が保管されるため、紛失や隠匿のおそれがない点が最大のメリットです。

    内容の証明がすでにされているため、遺言を開封する際も家庭裁判所の「検認」を受ける必要はありません。もっとも、証人や公証人に相続の内容が知られてしまうことや、料金がかかる点がデメリットと感じる方もいるでしょう。

  3. (3)秘密証書遺言

    秘密証書遺言とは、自ら作成して署名と押印をし、封印した遺言書を公証役場へ持参し、証人2名と公証人のもと、遺言書の存在を証明してもらう遺言方式です。民法第970条で定められている遺言方式で、自筆証書遺言とは異なり、遺言書の存在を確かなものにすることができるメリットがあります。

    ただし、中身については確認されていないうえ、保管は自ら行う必要があるため、紛失や改ざんのおそれがあります。公証人に存在を証明してもらえる分、費用がかかるものの自筆証書遺言のデメリットを完全に打ち消すことができないため、あまり利用されていないようです。

  4. (4)特別方式遺言

    特別方式遺言書は、死に瀕していたり、伝染病で隔離されていたりと、特殊な状況下で遺言をする際にのみ特別に認められる方式です。民法第976条から第979条で定められていて、それぞれの状況に合わせた要件が設定されています。

3、有効な遺言と遺言が無効になるケース

遺言書を作成するための要件は、それぞれの方式によって細かく定められていますが、遺言書によって法的に効力を発揮する内容は共通しています。せっかく遺言書を作成したとしても、法的な効力を失ってしまえば意味がありません。

  1. (1)法的に有効な遺言について

    遺言によって法的な効果が認められる事項は、民法によって限定されています。

    ●相続人の廃除
    虐待があったなど特定の場合、遺言によって特定の相続人を「廃除」し、相続させないことができます。

    ●財産分配
    財産を分配する割合に関しても改めて指定することや、配偶者や子どもといった法定相続人以外の人物に財産を渡すこともできます。

    ●身分
    子どもの認知など、身分に関する内容についても遺言による意思表示が可能です。遺言によって認知を行い、自分の子どもであると認められれば、認知された子どもも相続人になることができます。

    ●遺言執行者の指定
    相続に際して発生する名義変更や変更登記などの手続きを行う遺言執行者を指定できます。第三者に指定を委任することも可能です。

  2. (2)法的に無効となる遺言について

    遺言書を作成するうえでもっとも避けたい事態は、せっかく作成した遺言書が法的な効力を失ってしまうケースでしょう。
    たとえば、以下のようなケースでは遺言が無効になってしまう可能性があります。

    <どの方式の遺言書でも無効となる可能性があるケース>
    ●実際の財産と遺言書や目録の内容が異なるもの
    実際の遺産額と、遺言書の内容などに大きな差があるときは、遺言書自体が無効とされる可能性があります。

    <自筆証書遺言で無効となるケース>
    ●パソコンで打ったもの、遺言者以外の人物が書いたもの
    自筆証書遺言ではあくまでも「自筆」であることが必要です。
    ただし、平成31年の施行以降は、財産目録部分のパソコンでの作成が認められるようになる予定です。

    ●日付が特定できないもの、押印のないもの
    日付もとても重要なポイントです。「平成30年1月吉日」のような書き方では認められませんので、ご注意ください。

    <公正証書遺言で無効となるケース>
    ●証人が2人以上いない、もしくは証人の要件を満たしていない
    公正証書遺言では公証人に加えて、証人が2人以上必要です。推定相続人など資格がない人を除いて2人以上の証人がいない場合は、公正証書遺言であっても無効です。

    <秘密証書遺言で無効となるケース>
    ●遺言書と封筒にした印影が異なる
    遺言書と、それを入れた封筒への封印は同じものを用いなければ無効になります。

    <特別方式遺言書で無効となるケース>
    ●遺言者が普通方式の遺言をできるようになってから6ヶ月生存した場合
    民法983条により「遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存」したときには無効になるため、普通方式で書き直す必要があります。

4、まとめ

遺言は、あなたの意向を伝えるとともにトラブルを避けるために重要な役割を担います。しかし、厳格に定められている要件を満たさなければ、法的な効力を失うとともに、逆に火種となるケースも考えられます。

どのように書けばよいのか、また、どのような内容を記述しておけば、後々のトラブルを最小限に抑えることができるのか。個人ではわかりづらいものです。遺言を確実に行うためには弁護士に相談しておくことを強くおすすめします。

財産や家庭環境は相続ごとに異なります。効力のある遺言書をのこすためにも、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスにご相談ください。ベリーベスト法律事務所であれば、状況によって税理士などとも連携し、あなたの相続をよりベストなものとなるようサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています