ネットショップ開設! トラブル回避のために知っておくべき5つの法律
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平成31年2月、静岡県警サイバー犯罪対策課などは、静岡県沼津市が舞台の人気アニメのロゴを無断で使用した衣類を販売したとして、秋葉原の衣料品店の経営者ら3人を逮捕したという報道がありました。商標法違反の疑いが持たれています。
ネットショップは誰でも気軽に開設できるようになりました。あらゆるグッズなども安価で作成できるようになりつつあるため、このようなトラブルは頻発しつつあります。しかし、ひとたび商取引を始めたとなれば、法律を知らなかったでは済まされません。ネットショップで円滑にビジネスを進めるために知っておくべき法律知識を、静岡オフィスの弁護士が解説します。
1、ネットショップも通常の店舗経営と同じ
ネットショップといえど、そこで商品の売買取引が行われるのであれば、実際に店舗を運営するのと基本的には同じです。商取引上、何らかの法律違反を犯していた場合、逮捕され、罰金や懲役などの処罰を受けることも当然ながらありえます。
したがって、法律を違反することのないよう、ネットショップで取り扱うものやサービスに合わせて、関係する法律について知っておく必要があるでしょう。
2、ネットショップ開設で届け出が必要なケース
ネットショップであっても、商材の種類によっては取り扱を開始するために届け出が必要なケースが多々あります。
主な業務内容に伴う届け出先は以下の通りです。
●中古品の買い取り・販売
古物営業法に基づき、古物商許可願を所轄の警察署生活安全課へ提出。
●食品の販売
食品衛生法に基づき、営業許可願を所轄の保健所へ提出。
●健康食品の販売
食品衛生法・薬機法(正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます)に基づき、営業許可願を所轄の保健所・各都道府県の薬務課へ提出(いずれも種類による)。
●酒類の販売
酒税法に基づき、通信販売酒類小売業免許届を所轄の税務署へ提出。
●医薬品の販売
薬機法に基づき、薬局開設許可・医療品販売許可・特定販売届出を所轄の保健所・各都道府県の薬務課などへ提出。
●化粧品の製造・販売
薬機法に基づき、化粧品製造販売許可願(※国内の製造業者や輸入業者からの仕入れの場合は不要)・医薬部外品製造販売許可(※ブランド化粧品を直接輸入販売する場合)願いを所轄の保健所・各都道府県の薬務課などへ提出。
3、ネットショップ運営で知っておくべき5つの法律
次に、ネットショップの運営を行うのであれば知っておくべき、主な法律を紹介します。
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(1)特定商取引法~ネットショップ運営者が守るべき基本的なルール
特定商取引法とは、事業者による悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。通信販売、訪問販売、連鎖販売取引、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引などの消費者トラブルを生じやすい取引を対象にしています。ネットショップ運営にもっとも関わりが深く、事業者が守るべきルールと、クーリングオフ等の消費者を守る民事ルール等を定めています。
主な内容は以下の通りです。- 事業者の氏名等の明示義務付け
- 不当な勧誘行為の禁止
- 重要事項の表示義務付け、虚偽・誇大広告禁止
- 契約の重要事項を記載した書面の交付義務
- クーリングオフ(消費者による契約の解除)
- 事業者に不実告知などがあった場合、消費者は意思表示の取り消しが可能
- 消費者が途中解約する際などの損害賠償等の額の制限
特定商取引法に違反した場合は、業務改善指示や業務停止命令などの行政処分の対象となります。行為によって罰則は異なりますが、違反した者には、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。また、法人の代表者や従業員などがその法人の業務において違反した場合、最大で3億円以下の罰金刑が法人に対して科せられるケースもあります。 -
(2)個人情報保護法~適切な管理と利用目的の明示を
ネットショップ運営では、顧客の氏名や住所、購入履歴などの個人情報を取り扱います。個人情報保護法と同施行令では、個人情報を扱う事業者(個人情報取扱事業者)は、その情報を安全に管理することを義務付けられています。また、個人情報の利用目的について、明示しなければなりません。
たとえば、個人情報の秘密を漏らし、または盗用した者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。そのほかにも処罰を受ける可能性があるため、あらかじめ弁護士などに相談しながら、慎重に対応することをおすすめします。 -
(3)電子契約法~誤操作での購入を防ぐ対策を
電子商取引における契約の成立時期を定めているのが「電子契約法」(正式名称は「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」)です。
錯誤による意思表示の無効については民法第95条にも定められています。さらに同法では、民法第95条ただし書き適用範囲を修正しています。電子商取引における入力ミスやマウスの誤ったクリックなど、消費者の操作ミスによる錯誤があった場合の隔地者間の契約の成立時期について、電子契約法によって定められているのです。
なお、原則として、操作ミスによる契約は無効とすることが定められています。 -
(4)景品表示法~ウソや大げさな表示でだましてはいけない
景品表示法では、商品やサービスの品質・規格などの内容について、実際よりも著しく優良または有利であると消費者に誤認される表示を「不当表示」として禁止しています。
不当表示を行うと、景品表示法に基づく措置命令が行われることとなります。
この規制は、チラシ、パンフ、商品パッケージ、ラベル、TVやラジオのCM、雑誌、出版物、実演広告、ポスター、看板、セールストーク、そしてインターネット上の広告やメールなど、商品の情報を届けるおよそあらゆるものに適用されます。
どの媒体であっても、画像やキャッチコピーは重要ですが、度を越した表現にならないよう注意しなければなりません。以下代表的な例です。
●不実証広告規制の例:
「食事制限なし!このサプリを飲むだけ。1ヶ月でこんなに痩せる!」
→ダイエット効果の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料がない。
●有利誤認表示の例:
「通常価格3000円のところ、限定価格1000円!」
→相当な期間3000円で販売していたことがない
●不当な景品の制限
景品類の最高額、総額等を規制することで、景品につられて低品質や割高なものを買わされるといった不利益を避けるために制定されています。景品金額と商品金額の制限などは弁護士に確認してみることをおすすめします。
調査により違反していることが判明した場合、消費者庁または都道府県名知事より指導を行う「措置命令」を行います。課徴金納付命令が付されるケースもあります。 -
(5)家庭用品品質表示法~原産国・成分・取り扱方法などを明確に
家庭用品品質表示法は、家庭用品の品質に関する表示の適正化を図り、一般消費者の利益を保護することを目的に制定されています。対象製品は、繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具、雑貨工業品です。
表示すべき情報は種別ごとに制定されています。繊維製品であれば、原産国名、原材料名と使用比率、洗濯方法、表示者の情報などです。これらの表示は製造者が付するのが一般的です。
例:「綿 100% 原産国 ベトナム 〇✕株式会社 <住所、電話番号>」
ただし、海外で買い付けた商品をネットショップで販売するときに、商品の品質表示が日本語で付されていなければ、販売業者がこれを日本語で表示する必要があります。そして表示した者の「氏名または名称」および「住所または電話番号」を付記し、責任の所在を明確にする必要があります。
4、ネットショップの開設にあたり弁護士に相談するメリット
ネットショップであっても、業種や対象物、サービス内容によって関係する法律や政令は多岐に及びます。そのため、すべての法規を網羅して対策ができているか、素人で判断することは難しいものです。
あらかじめ弁護士に相談しておき、何が適法で、どのような行為が禁じられているのかを理解しておくことで、無用なトラブルを防ぐことができるでしょう。特に、契約書の内容やサービス規約の内容は、自身の事業の責任範囲などを定める重要な文章です。契約書や規約を正しく設定しておくことは、訴訟リスクを低減し、事業継続性を高める大事な「盾」となります。
無知によるトラブルを回避するためにも、弁護士に相談してから事業を開始することを強くおすすめします。
5、まとめ
ネットショップは全国から顧客を集めることができるため、大きなビジネスチャンスにもなりえます。一方で、法律や条令、規制について理解せずに始めてしまうと、行政処分を受けたり、民事的な損害賠償や、顧客との訴訟に発展したりする多大なリスクが生じます。
安心して健全なネットショップを運営するためには、事前に弁護士のアドバイスを得ることをおすすめします。ベリーベスト法律事務所では、ネットショップ専業など小規模な事業者でも利用しやすい顧問弁護士サービスも提供しています。静岡オフィスの弁護士があなたの業態に適したアドバイスを行います。既に事業を展開している方のご相談も可能です。お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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