婚約は口約束でも成立する? 婚約破棄として慰謝料請求できるのか
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静岡県にお住まいの方が婚約し、結婚することになったとき、式や新居のことなど様々なことを検討されることでしょう。なお、「ゼクシィ 結婚トレンド調査2023調べ」によると、静岡県において結納・婚約~新婚旅行までにかかった費用の平均額は、首都圏に次いで多い431.9万円だったとのことです。
これだけの費用をかけて準備したとしても、残念ながら婚約破棄となってしまうケースがあります。離婚の場合、その理由によっては慰謝料請求が可能ですが、婚約の場合も同様です。また、婚約は口約束でも成立する場合があります。
正当な理由なく婚約を破棄されたときは、口約束であっても慰謝料請求ができる可能性があるため、弁護士への相談を検討しましょう。詳細について、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスの弁護士が解説します。
1、口約束でも婚約は成立する?
婚約は、互いに契約書などを交わして行われるケースは少なく、むしろ口約束によって行われることが多いです。
口約束であっても婚約は成立することがありますが、結婚に向けた真摯(しんし)な合意がなければ認められないのでご注意ください。
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(1)婚約とは
「婚約」とは、将来的に結婚する旨の約束をいいます。
婚約は契約の一種であり、婚約した男女は互いに結婚する義務を負います。法的には婚姻届を提出しなければ結婚は成立しませんが、もし正当な理由なく婚姻届の提出を拒否した場合は、相手方が被った損害(慰謝料など)を賠償しなければなりません。 -
(2)婚約の成立要件
婚約については、法律上特に方式が定められていません。男女間における結婚に向けた真摯な合意があれば、方式を問わず婚約が成立します。したがって、口約束による婚約も可能です。
ただし男女間では、愛情表現として「結婚しよう」などの会話が日常の中で冗談などとして行われるケースもあるかもしれません。このような日常会話が行われただけで、婚約による法的な義務を相互に負わせるのは不適切です。
そのため婚約は、結婚に向けた真摯な合意がなければ成立しないと解されています。「結婚しよう」という口約束だけでは、結婚に向けた真摯な合意が認められないと判断される可能性が高いでしょう。
婚約の存在を主張するためには、口約束に加えて婚約の成立を推認させる事情が必要となります。 -
(3)口約束でも婚約が成立する場合の例
特に書面などを交わしていなくても、以下のような場合には婚約が成立していると判断される可能性が高いです。
- 互いの両親に結婚のあいさつを済ませた
- 婚約指輪を購入した
- 結納を行った
- 婚姻届をすでに作成している
- 親族や友人に婚約者として紹介した
- 結婚式場の下見や予約をした
- 結婚後の新居を探している
- 女性が婚約相手の子を妊娠している
- すでに長期間同棲している
2、婚約破棄と婚約解消の違い
「婚約破棄」と「婚約解消」は、いずれもすでに行われた婚約を取り消すことの表現として用いられます。
婚約破棄は、「一方的に婚約をなかったことにする」という意味で用いられます。婚約は契約であるため、一方的に破棄するためには、契約上の解除事由または相手方の債務不履行が必要となります。これらに該当する正当な理由がないにもかかわらず、一方的に婚約を破棄した場合は、慰謝料等の支払義務が発生します。
これに対して婚約解消は、「双方の合意によって婚約関係を解消する」という意味で用いられるのが一般的です。合意による婚約解消については、互いに慰謝料の支払義務を負わないのが通常ですが、双方の合意によって慰謝料や解決金が授受されるケースもあります。
3、口約束の婚約を破棄されたら、慰謝料は請求できるのか?
口約束による婚約を破棄された場合には、婚約者に対する慰謝料請求を検討する余地があるといえます。婚約者が浮気をしていた場合は、浮気相手に対しても慰謝料を請求できるケースもあるでしょう。
ただし、口約束だけでは婚約が認定される可能性が低いので、合意の存在を立証し得る別の証拠を確保する必要があります。また、婚約破棄について正当な理由がある場合には、慰謝料請求は認められないので注意が必要です。
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(1)慰謝料請求には、口約束を補強する証拠が必要
前述のとおり、婚約の成立には結婚に向けた真摯な合意の存在が必要です。
「結婚しよう」という口約束が存在するだけでは、日常会話の一環にすぎないと見ることもできるので、婚約の成立が認められる可能性は低いでしょう。
これに対して、口約束を補強する有力な証拠があれば、婚約の成立が認められる可能性が高まります。婚約破棄の慰謝料請求を行う際には、婚約の成立を立証し得る証拠をできる限り確保することが大切です。 -
(2)婚約破棄の慰謝料請求に役立つ証拠の例
たとえば以下のような証拠があれば、婚約の成立を立証するために役立ちます。
- 作成済みの婚姻届
- 結納品、結納に関するメッセージのやり取り
- 婚約指輪やその購入履歴
- 結婚式場との契約書
- 両親、親族、友人などの証言
- 同棲期間が分かるもの(住民票など)
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(3)婚約破棄に正当な理由があれば、慰謝料請求は認められない
婚約が成立していたとしても、婚約破棄について法的に正当な理由がある場合には、慰謝料請求は認められません。
口約束で婚約をしていた場合、契約書などは存在しないので、民法の規定に従って婚約破棄の可否が判断されます。すなわち、婚約破棄された側による債務不履行が認められるかどうかがポイントです(民法第541条、第542条参照)。
たとえば、婚約破棄された側が以下のような行為をした場合には、債務不履行が認められるため、婚約破棄の正当な理由があると考えられます。婚約破棄の正当な理由が認められる場合の例 - 別の異性との浮気
- DV(暴力)
- モラハラ(重大な侮辱など)
- 同棲しているのに生活費を全く払わない
- 性行為の強要
これに対して、以下のような理由による婚約破棄には正当な理由がなく、慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
婚約破棄の正当な理由が認められない場合の例 - 性格の不一致を理由に、一方的に婚約を破棄した
- 別の人を好きになったので、一方的に婚約を破棄した
- 転勤が決まり、転勤先で自由に行動したくなったので、一方的に婚約を破棄した
4、婚約破棄の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット
婚約破棄の慰謝料請求を行う際には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
婚約破棄の慰謝料請求について、弁護士に相談・依頼することの主なメリットは以下のとおりです。
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(1)慰謝料請求の成否について、見通しを知ることができる
口約束だけで婚約をしていた場合、婚約破棄の慰謝料請求が認められるとは限りません。十分な証拠がそろっておらず、慰謝料請求は認められにくいと思われるケースもあります。
成算がないまま慰謝料請求を行うと、手間やコストが無駄になってしまうおそれがあります。そのため、あらかじめ慰謝料請求の成否について見通しを立てることが大切です。
弁護士に相談することで、事実関係や法律のルール、訴訟実務などを踏まえ、婚約破棄に関する慰謝料請求の可否や、慰謝料相場(慰謝料額)などの見通しについてアドバイスを受けることができます。 -
(2)慰謝料請求の証拠収集をサポートしてもらえる
口約束による婚約の存在を立証するためには、婚約の成立を立証し得る証拠を確保することが大切です。証拠の価値は最終的に裁判所が判断するため、裁判所の視点から見て有力な証拠をできる限り確保する必要があります。
婚約の成立に関する証拠として何を活用できるのかは、具体的な状況によって異なります。弁護士は、相談時のヒアリングを通じて事実関係を正確に把握した上で、証拠収集の方法について具体的にアドバイスします。 -
(3)示談交渉や訴訟などの対応を依頼できる
実際に婚約破棄の慰謝料請求を行う際には、相手方との示談交渉や訴訟手続きへの対応などが必要になります。不慣れな方がこれらの対応を行うのは非常に大変ですし、精神的にも大きな負担がかかってしまうでしょう。
弁護士は、婚約破棄の慰謝料請求に必要な対応を全面的に代行します。示談交渉や訴訟手続きの対応につき、弁護士が状況に応じて適切に対応することで、適正額の慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
また、相手方と顔を合わせることや、専門的な手続きへの戸惑いによる精神的なストレスを軽減できる点も、弁護士に依頼する大きなメリットです。
5、まとめ
婚約は口約束でも成立することがあり、正当な理由なく婚約を破棄された場合は慰謝料請求が可能です。
ただし、口約束による婚約の成立が認定されるためには、結婚に向けた真摯な合意の存在を立証し得る証拠を確保しなければなりません。どのような証拠が利用できるかは状況によって異なるので、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスでは、婚約破棄の慰謝料請求に関するご相談を随時受け付けております。お客さまのご心情に寄り添いながら、適切な形でトラブルを解決できるように、実績ある弁護士が尽力いたします。
婚約相手から一方的に婚約を破棄されたことにつき、慰謝料を請求したいと考えている方はお気軽にご相談ください。
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