会社のお金を横領してしまった! 返済できないときの対処法を解説
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会社のお金を自分のために使ってしまった場合、返済を求められるのはもちろん、「返済できないなら刑事告訴する」などと言われることもあるでしょう。
とはいえ、手元にお金がなく、返済できない場合はどうすればいいのでしょうか?犯罪に問われてすぐ逮捕されてしまうのでしょうか?
本記事では、会社のお金を横領してしまった場合にどのような罪に問われるのかを家族への影響と併せて、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスの弁護士が解説します。
1、横領って何? どんな責任が発生するの?
横領とは、他人から預かっている他人のお金やモノを自分のものにしてしまう犯罪です。下記の法的責任を問われる可能性があります。
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(1)横領では刑事責任・民事責任が問われる
経理係が会社のお金をギャンブルに使ってしまった、後見人が被後見人の財産を自分の借金の返済に当ててしまったなど、他人から預かるものを自分の利益のために使ってしまった場合は法的責任が発生します。
横領を行ってしまった場合「刑事責任」と「民事責任」が発生します。
刑事責任とは、刑事罰のことです。
警察から横領を疑われている場合には、捜逮捕・勾留されたり、逮捕されなくとも取調べを受けたりします。また、起訴されて裁判となり横領の事実が認められれば刑事罰が課されることになります。
一方で民事責任では、被害者に与えた損害に対する賠償の責任を負います。
会社のお金を横領して返済せずにいると、被害者から訴訟を提起されて、損害の賠償を命じる判決が出されることがあります。それでも賠償をしなければ給与や不動産などの財産を差し押さえられることもあります。 -
(2)横領罪の種類と刑事罰
横領罪には次の3種類があり、それぞれ課される刑事罰が違います。
● 単純横領罪(刑法第252条)
自分が管理・占有している他人のモノやお金を自分のものにした場合に適用されます。
たとえば、友人から借りたDVDを勝手に売却したといったケースです。
刑罰は「5年以下の懲役」です。
● 業務上横領罪(刑法第253条)
自分が仕事等で管理・占有しているモノやお金を自分のものにした場合に適用されます。
たとえば経理担当の従業員が売上金を無断で引き出し、生活費にあてたといったケースです。
刑罰はほかの横領罪に比べて重い「10年以下の懲役」です。
● 遺失物等横領罪(刑法第254条)
他人の管理下になくなったモノやお金を自分のものにした場合に適用されます。
たとえば、道で拾った一万円札を警察に届け出ずに使ったといったケースです。
刑罰は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。 -
(3)横領の民事責任
横領事件では、相手や会社は財産上の損害を受けています。
そのため横領をした本人には、被害を弁償する必要があります。
多くは被害者が直接返済を請求してきます。その際に、横領をした本人からの謝罪がなかったり、十分な返済できなかったりする場合には、民事裁判にまでなる場合もあります。
2、横領金を返済できない場合、返さなくてもいい?
横領したお金をすべて使ってしまった場合や手元にお金がない場合、すぐには返済できないでしょう。では返済できない場合にはどうなってしまうのでしょうか?自己破産をすれば返済義務はなくなるのでしょうか?
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(1)返済しないと刑事事件となる可能性が高くなる
横領をされた被害者にとって、最も望むのは被害金が戻ることでしょう。
そのため返済される見込みがない場合には、被害者は警察に被害届を出したり刑事告訴したりする可能性が上がります。
警察は、被害届や刑事告訴により犯罪の嫌疑を認めると刑事事件として捜査を始めます。
逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合には、逮捕されることもあります。
その一方、被害弁償がされれば、事件を公にせずに示談をして当事者間で解決することも少なくありませんし、もし刑事告訴されたとしても起訴は避けられる可能性があります。 -
(2)自己破産しても賠償責任は残る
自己破産で免責を受けた場合、借金の返済義務はなくなります。
そのため横領したお金の返済もせずに済むと思う方もいるかもしれませんが、そうはいきません。
自己破産しても横領などの「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」については、免責されないのです(破産法第253条1項2号)。
そのため自己破産をして借金の返済を免れたとしても、横領したことにより生じた損害の賠償はしていかなければいけません。
3、横領は家族にも責任が及ぶ?
会社のお金を横領してしまった場合、「家族は逮捕されるのか」「代わりに返済と求められるのではないか」と家族への影響を心配する方もいるでしょう。家族が責任を問われるかどうかはケースバイケースです。
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(1)家族が刑事責任を問われることはまずない
単独で行った横領について、その家族が刑事責任を問われることはありません。
逮捕されたり裁判にかけられたりするのは、あくまで事件を起こした本人です。
ただし、家族が横領に手を貸していた場合には共犯と判断され、逮捕される可能性があります。 -
(2)家族が民事責任を問われる3つのケース
民事責任については、次のようなケースに該当する場合には家族も責任を負わなければいけません。
● 横領したお金だと知って使っていた
夫や妻などが会社から横領したお金だと知っていた・気づいていたのに、何も言わずに受け取っていた場合、「不当利得」として会社から返還を求められることがあります。
「不当利得」とは正当な理由なく他人に損失を与えて得た利益のことで、損失を被った側にはその返還を請求する権利があります(民法第703条)。
● 身元保証人になっていた
横領した本人の身元保証人になっていた場合は、会社に対する賠償責任を負います。
身元保証人には、本人が会社に損害を与えた場合にそれを賠償する義務があります。
つまり本人が横領をした場合には、身元保証人にも返済の義務が生じるということです。
ただ、実際には被害額全額の弁済が請求されることはあまりありません。
また身元保証は原則3年、最大5年という期限の定めがあるため、その期間を過ぎていれば責任は問われません。
● 横領した本人が死亡した
相続では現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継がれます。
そのため、横領をした本人が返済せずに亡くなった場合、相続した家族は代わりに賠償をしていかなければいけません。
相続放棄をした場合には返済をする必要はありません。 -
(3)家族が自発的に返済することは可能
上記3つのケースに当てはまらない場合でも、家族が自発的に返済することは可能です。
被害弁償がされれば刑事告訴は避けられる可能性が高いため、家族が一部または全部を返済するケースも少なくありません。
4、横領したお金が返済できない場合の対処方法
横領したお金が多額であったり、ほかにも借金があったりした場合、すぐには全額返済できない可能性もあります。その場合、どのように対処したらいいのでしょうか。
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(1)分割払いを提案
横領したお金の返済を求められたものの手元に資金がなく一括返済できない場合には、分割返済を提案してみましょう。
被害者も返済が見込めるのであれば、応じてくれるかもしれません。
ただし連帯保証人をつけるなど、何かしらの担保を求められることがあります。
また被害額が大きい場合には、減額をお願いするのも一つの方法です。 -
(2)示談交渉
被害者に示談の交渉を申し込みます。
一括で返済できるのであれば、被害者は示談に応じてくれることが多数です。
分割弁済の場合でも、実現可能な返済計画があり謝罪の意思を示せていれば、示談できるかもしれません。
また示談書のなかに「被害届を出さない、刑事告訴をしない」といった項目をいれておけば、その後刑事責任を問われる可能性は著しく減るので、安心です。
もし逮捕されたとしても、不起訴になる可能性が高まります。
被害者には怒りの感情があるかもしれませんが、横領をした本人が逮捕されれば被害回復が難しくなるため、現実的に返済が見込める示談に応じてくれる可能性はあります。 -
(3)交渉は弁護士に依頼しよう
分割返済や示談を求めても、横領した人の言うことを簡単には信用してくれないでしょう。
そのため本人だけで交渉をしても、うまくいかないことは少なくありません。
また示談を成立させるためには実現可能な返済計画を作り、反省や謝罪の意思を示す必要もあります。
そのため交渉は弁護士に依頼されることをおすすめいたします。
弁護士であれば会社も信用してくれやすいため、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
また逮捕や民事裁判になってしまったとしても、弁護士がいれば安心です。
5、まとめ
横領が発覚した際、「逮捕されるかもしれない」「返済なんてできない」と目の前が真っ暗になるかもしれません。ですが、最悪の事態を避けるためにできることはあります。すぐにベリーベスト法律事務所 静岡オフィスにご相談ください。弁護士が状況を確認し、会社との交渉など今後の対応をサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています