在宅事件になった場合の流れと注意点を解説

2022年09月20日
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在宅事件になった場合の流れと注意点を解説

「犯罪をしてしまった人は、警察に逮捕されて身柄を拘束されるものだ」というイメージを持っていられる方は、多いと思われます。

しかし、刑事事件は「在宅事件」と「身柄事件」の二種類に分けられ、在宅事件になった場合は、身柄は拘束されないのです。在宅事件として捜査の対象とされている人は、会社や学校などの日常生活を送りながら取り調べに応じることができます。ただし、取り調べを受けていくなかで途中から逮捕されて、身柄を拘束される可能性もあります。

本コラムでは、在宅事件になった場合の流れと注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、在宅事件とは?

犯罪の容疑を受けた人は警察の捜査対象となります。
身柄を拘束されたうえで捜査を受ける場合は「身柄事件」といい、身柄拘束をされず日常生活を送りながら捜査の対象となる場合は「在宅事件」といいます。

  1. (1)在宅事件の概要

    在宅事件とは、身柄拘束を受けず自由に生活を送りながら、捜査を受ける事件を指します。
    捜査機関から身柄の拘束をされませんので、職場に行くこともできますし、日常生活を送ることも自由にできます。在宅事件であれば、日常生活を送りながら捜査を受けることができます。

  2. (2)在宅事件のメリットやデメリット

    捜査の対象となる人にとっての在宅事件のメリットとは、身柄を拘束されないために日常生活への影響を最小限にとどめることができる点です
    もし身柄を拘束されたら、職場や学校には行けなくなり、普段通りの生活を送ることができなくなります。また。身柄拘束が長引くと円滑に日常生活に戻ることが困難になります。しかし、在宅事件なら、日常生活をそのまま送ることができますので、周囲に事件のことを知られるおそれも少なく、生活に生じる影響も小さくなるのです。

    一方で、在宅事件には事件終結までの時間的な制約がないため、起訴または不起訴が確定するまで時間がかかり、かえって捜査が長期化してしまう可能性が高い、というデメリットもあります。ただ、日常生活をそのまま送ることができますので、身柄拘束をされることと比較すればそのデメリットは相当小さいと言うことができます。

  3. (3)在宅事件の注意点

    在宅事件では、身柄を拘束されないので生活の自由があります。しかし、捜査の展開によっては途中から身柄を拘束される可能性もある点に注意が必要です。

    在宅事件では必要に応じて警察署での取り調べが行われます。呼び出しにはしっかりと応じて、証拠隠滅などを疑われるような行動は慎む必要があるのです。

2、身柄事件との違いについて

罪を犯して逮捕されると、捜査機関に身柄を拘束されることになります。身柄拘束中は自宅に帰ることはできず警察署などの施設で生活をするため、自由がかなり制限されることになるのです。以下では、身柄事件の特徴を解説します。

  1. (1)身柄事件とは

    刑事事件を起こして逮捕され、捜査機関に身柄を拘束される事件を「身柄事件」といいます。
    釈放されない限りは、警察署の留置場や拘置所などの施設内で生活をすることになるため、自由な生活を送ることは不可能になります。

  2. (2)身柄事件と在宅事件の違い

    被疑者の生活の自由という点で、身柄、在宅事件には大きな違いがあります。
    まず、在宅事件は自宅での生活を送りながら、取り調べを受ける際に警察署に行きます。身柄拘束を受けておりませんので、取り調べを中断したり、帰宅したりすることも自由です。一方で、身柄事件では、警察施設で生活を送りながら取り調べを受けます。帰宅することもできません。

    身柄事件の場合は、事件が終結するまでの間は自由に外出することができないため、会社や学校に行けなくなるという点が、大きなデメリットになります

3、事件の流れについて

在宅事件の場合は自宅での生活が可能です。しかし、場合によっては、在宅事件として扱われている最中でも逮捕されて、警察に身柄を拘束されることがあります。
以下では、逮捕から裁判に至るまでの流れを解説します。

  1. (1)逮捕

    逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3種類があります。基本的な逮捕は通常逮捕です。
    通常逮捕とは、裁判官が逮捕状を発付して、警察が被疑者を逮捕する逮捕種別を指します。逮捕状は、警察が裁判官に請求します。
    警察官や目撃者の目の前で犯罪が行われる逮捕は、「現行犯逮捕」です。現行犯逮捕では、逮捕状は必要とされません。

    また、逮捕状を請求する時間がなく、逃走や証拠隠滅の危険性がある場合に逮捕できる場合もありますが、これを「緊急逮捕」といいます。この場合、緊急逮捕後に逮捕令状の請求をします。

  2. (2)勾留

    警察に逮捕されると身柄を拘束されて、その間に警察から取り調べを受けます。
    逮捕の段階で警察が被疑者の身柄を拘束して取り調べができる期間は、48時間以内と定められています。取り調べの結果、犯人ではないことや犯罪に該当しないことが明らかとなった場合は釈放されます。

  3. (3)送検

    警察の取り調べの結果、釈放されない場合は検察庁に身柄を移されます。これを検察官送致といい、ニュースなどでは送検と呼ばれます。送検された後は検察官が捜査を担当します。検察官は、捜査の結果を踏まえて、被疑者を起訴すべきかどうか判断します。

    検察官が捜査をできる期間は24時間以内であり、時間内に起訴・不起訴を決定できない場合は裁判所に勾留を請求します。
    勾留が認められると10日間までの身柄拘束が継続しますが、検察官が裁判官に対して勾留延長を請求することで、最大20日間まで勾留が延長されます。

  4. (4)起訴または不起訴

    検察官の捜査の結果で起訴または不起訴が確定します。不起訴になれば、その時点で釈放され自由になります。
    ただし、釈放されたからといっても「無罪放免」とは限りません

    警察や検察官の取り調べの持ち時間を経過したために釈放されただけの場合は、処分保留で在宅事件として捜査を受け、証拠が十分にそろった段階で起訴されるおそれがあります。

  5. (5)裁判

    検察官が「起訴するべきだ」と判断したら、刑事裁判に発展することになります。
    日本の場合、起訴された場合の有罪率は非常に高くなっています。
    裁判で有罪判決が下され、不服(控訴)を申し立てなかった場合には、判決が確定し「前科」がついてしまいます
    執行猶予が付かない実刑判決が確定すれば懲役となってしまう可能性もあります。そのため、できる限り検察官から起訴されないようにすることが重要になるのです。

4、在宅起訴の特徴は?

在宅事件でも、途中で逮捕または起訴されてしまう可能性があります。
以下では、在宅事件での起訴について解説していきます。

  1. (1)在宅起訴となる条件

    在宅起訴となる条件は、被疑者に逃亡や証拠隠滅の危険性がない場合です。

  2. (2)在宅起訴になった場合の有罪率

    身柄事件でも在宅事件でも、検察官が起訴を決める場合には、裁判において有罪であると立証できる証拠がそろっていると考えるべきです。そのため、在宅起訴の場合でも、実際に裁判になれば有罪判決になる可能性は高い、と考えておくべきです。

  3. (3)在宅起訴後の生活の制限

    在宅起訴されたからといって、すぐに日常生活に影響が出るわけではありません。在宅起訴の場合は、逃亡のおそれや証拠隠滅の可能性が低いと判断された事件ですので、比較的軽微な事件である場合が多いです。
    しかし、事件によっては懲役刑が言い渡される場合もあるので、在宅事件だからといって安心できるわけではありません

5、在宅事件中に家族ができることは?

もしも家族が事件の被疑者となり、在宅事件として捜査の対象になってしまったら、家族はどのようなサポートができるのでしょうか。
以下では、在宅事件における家族のサポートについて解説します。

  1. (1)家族を精神的にサポートする

    在宅事件は身柄を拘束されないため、生活の自由は守られます。そのため、職場や学校に与える影響は小さいといえるでしょう。

    ただし、身柄事件と違い、在宅事件は捜査の終わりが明確には分かりません。いつ終わるか分からない捜査に対応し続けるのは精神的な負担が大きくなります。家族としては、できる限り精神的なケアを行い、捜査終了までサポートしていくべきでしょう。

  2. (2)弁護士に相談する

    在宅事件で捜査を受けることになったら、まずは弁護士に相談するのが得策です。在宅事件といっても起訴されてしまうと有罪になる可能性は極めて高いため、起訴を防ぐことが重要になります。

    弁護士に相談すれば、取り調べの受け方のサポートや総合的なアドバイスが受けられますまた、被害者との示談交渉も弁護士が代行することができます

6、まとめ

在宅事件では、身柄を拘束されないため生活の自由が確保できますが、反面、捜査期間が明確ではないため事件が長期化するリスクもあります。また、在宅事件でも、途中で逮捕されて身柄事件に切り替わる可能性もあります。事件の無用な長期化や身柄事件への切り替えを防ぐには、弁護士と相談し、捜査機関への対応などについて相談しましょう。

もしも事件の被疑者となり、在宅事件として捜査を受ける事態になったら、まずは弁護士に相談することが大切です。まずはベリーベスト法律事務所に、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています