借金で家賃滞納したらどうなる? 家賃の支払いで困った時の相談先も併せて紹介

2019年09月03日
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借金で家賃滞納したらどうなる? 家賃の支払いで困った時の相談先も併せて紹介

日本賃貸住宅管理協会が2018年12月に発表した「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」によれば、全国の2ヶ月以上の家賃滞納率は1.3%となりました。これは、賃貸住宅に住んでいる約77世帯に1世帯が2ヶ月以上家賃を滞納していることを表しています。

これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、家賃滞納されている中には、借金がかさんで家賃が払えなくなっているケースも少なくありません。では、借金で家賃滞納したらどうなるのでしょうか。借金のように、家賃も整理することができるのでしょうか。

1、家賃滞納するとどうなるのか

皆さんの中には、「家賃を振り込むのを忘れたことがある」という方も多いと思います。1~2回家賃を振り込むのを忘れたくらいでは特に問題にはなりませんが、長期にわたり家賃が払えなくなって滞納するとどうなるのでしょうか。

  1. (1)3ヶ月滞納すると立ち退きを迫られることが多い

    一般的に、家賃を1~2ヶ月滞納しているくらいでは退去させられることはない傾向にあります。借地借家法では、単に1~2回の家賃滞納を理由に債務不履行があったと主張することはできず、貸主と借主の相互の信頼関係が破壊されたと言えるくらいの理由がなければ、借主に退去を迫ることはできないとされています。これを「信頼関係破壊の法理」と呼びます。実務上では、一般に3ヶ月以上家賃を滞納すると、信頼関係の破壊が認められ、貸主は賃貸契約を解除することができるとされています。

  2. (2)督促状が届いて、明渡し訴訟を提起されることも

    家賃滞納をした場合、3ヶ月を待たずに督促状が届いたり、電話や戸別訪問で支払いを請求される可能性があります。また、場合によっては入居者だけでなく、連帯保証人や保証会社に連絡が行くこともあります。

    複数回督促が来ても支払いに応じない場合は、契約解除の予告通知書が内容証明郵便で届きます。もしここで滞納家賃を全額支払うことができれば、賃貸契約書とは別に、「今後滞納があれば即座に契約を解除して部屋を明け渡す」旨を約束させるための確約書にサインを求められることも少なくありません。

    それでもなお、滞納家賃を支払わずに退去もしない場合は、大家に建物明渡し訴訟を提起され、その後強制退去させられる可能性が高いと言えます。

  3. (3)保証会社を利用している場合は取り立てが厳しくなる可能性

    保証会社を利用している場合は、家賃滞納をすると大家から保証会社に連絡が行きます。そうすると、保証会社から家賃が未払いであることを知らせる電話がかかってきてきます。もし、この時点で支払いの目途が立っており、いつまでに支払うことができるのかを保証会社に伝えることができれば厳しく取立てを受けることは多くありません。しかし、そうでない場合は、厳しく取り立てられることもあります。

2、借金問題を解決する方法

家賃滞納をしてしまう要因として、多重債務に陥り、家賃の支払いまで手が回らなくなってしまうことが考えられます。この場合、弁護士に依頼するなどして債務整理をして借金額を減らすもしくはゼロにする方法があります。ただし、債務整理をすることで信用情報機関にそのことが登録されてしまうことに注意が必要です。

  1. (1)任意整理

    任意整理とは、貸金業者や金融機関(以下、「貸金業者等」)と直接借金の減額交渉を行うことで、借金額を減らす方法です。裁判所を介すことなくできる方法のため、手間がかからないことがメリットですが、1社1社交渉しなければならない点がデメリットです。借金がゼロになるわけではないため、サラリーマンなど毎月定期的に収入があり、少額ずつでも返済の見通しが立てられる方に向いています。

  2. (2)個人再生

    (小規模)個人再生とは、裁判所に申し立てることで、裁判所を介して借金額を減らしてもらい、再生計画を立てた上で借金残額の返済をしていく方法です。債務者が個人であること、将来において反復的・継続的な収入を得る見込みがあること、負債総額が5000万円以下であること、といった条件はありますが、借金額を減らしてもらえることが大きなメリットです。

  3. (3)特定調停

    特定調停とは、裁判所で債務総額の利息を利息制限法上の上限金利に引き直した上で、調停委員の仲介のもと、貸金業者等と返済について話し合いを行う方法です。話し合いは調停委員が主導権を持ってアドバイスをしてくれるため、口論にならずに済むことや弁護士をつけなくても手続きができる点がメリットです。ただ、調停が成立した後に作成される調停調書は債務名義となるため、調停で決めた返済計画に従って返済ができなければ強制執行が行われて財産や給与などが差し押さえられる可能性がある点がデメリットと言えるでしょう。

  4. (4)自己破産

    自己破産とは、裁判所に申し立てることで借金をいわば帳消しにしてもらう方法です。自己破産を申し立てたことは官報に掲載され、原則として保有財産は換金処分の対象になりますが、99万円以下の現金は手元においておくことができます。

3、滞納した家賃を債務整理することはできる?

では、家賃滞納した場合、その滞納した家賃を債務整理することはできるのでしょうか。債務整理をした場合、何か不利になることがあるのかについても併せて解説します。

  1. (1)家賃を債務整理すること自体はできる

    結論から言えば、家賃を債務整理の対象とすることは可能です。自己破産をすれば、滞納した家賃は破産債権となるため、支払義務は一切なくなります。ただし、支払いを免除されるのは自己破産の申立て前に滞納していた家賃に限られ、申立て後に滞納した家賃は免除されないことに注意しましょう。

  2. (2)連帯保証人に迷惑がかかるおそれあり

    滞納家賃を債務整理すると、連帯保証人に迷惑がかかるおそれがあります。債務整理の手続きをした場合、貸主は連帯保証人に請求しようとする可能性があるからです。そのため、賃貸借契約時に連帯保証人をつけていて、家賃滞納を理由に債務整理をする場合は、あらかじめ連帯保証人に説明をしておくことが重要です。

  3. (3)立ち退きを迫られる可能性も

    家賃滞納した後に、滞納家賃を債務整理すると、立ち退きを迫られる可能性があります。しただ、家賃滞納が直ちに解除事由にあたるわけではないため、契約を続けられるように交渉する余地はあります。場合によっては、

    しかし長期にわたり家賃滞納をしていた場合は、貸主・借主間での信頼関係が破壊されていると考えられるため、債務不履行を理由に立ち退きを迫られる可能性が高くなるといえます。

  4. (4)新しく賃貸借契約を結ぶことには支障がない

    債務整理をして家賃滞納をしていた家を退去させられても、その後新しく賃貸借契約を結ぶことにはほぼ支障がないこともあります。不動産会社は、信用情報機関が持っている個人の信用情報にはアクセスできず、いわゆる「ブラックリスト」に載っていたとしても不動産会社にはわからないためです。ただし、保証会社を利用する場合は、信販系の保証会社は信用情報にアクセスできるため、入居審査に落ちてしまう可能性があります。

  5. (5)家賃がクレジットカード払いの場合は要注意

    ただし、家賃がクレジットカード払いの場合は、家賃の支払いに対応できない可能性があります。債務整理をするとブラックリストに載ってしまうため、そこから情報が抹消されるまでの間、新しくクレジットカードを作ったり、クレジットカードを利用することができなくなってしまうのです。そのため、家賃の支払いがクレジットカード払いになるところは避けたほうがよいでしょう。

4、家賃滞納で困ったときの相談窓口

どうしても家賃が支払えなくなった場合は、滞納する前に各相談機関に相談に行くことが大切です。ここでは、家賃滞納について相談できる場所をご紹介します。

  1. (1)家主もしくは不動産管理会社

    家賃が支払えなくなったら、まずは賃貸人である大家もしくは不動産管理会社に早めに連絡を入れ、相談しましょう。「病気や事故で働けなくなり、収入が途絶えた」などの特別な事情があれば、ある程度支払いを猶予してもらえることもあります。何も連絡をせずに家賃を滞納すると、悪意があるとみなされて信頼関係が失われてしまうことも考えられるため、家主や不動産管理会社に必ず相談するようにしましょう。

  2. (2)市町村役場

    また、家賃滞納は公的機関でも相談することができます。市町村の生活相談窓口で事情を話した上で相談すれば、生活保護も受けられる可能性があります。自治体によっては少額の貸付を行っているところもありますので、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。

  3. (3)生活困窮者自立支援制度の相談窓口

    また、国が行っている生活困窮者自立支援制度もあります。これは働きたくても働けない、住むところがないといった事情を抱えている方のために支援員が支援プランを作成し、自立支援をするものです。国から委託を受けた機関が就労支援や就労訓練を行うほか、住居を失ったまたは失いそうな方に対しては、一定期間宿泊場所の提供や、家賃相当額の支給なども行っています。

  4. (4)弁護士

    「家賃滞納をして困っている」「借金を整理してもう一度やり直したいが、何をどうすれば良いかわからない」という場合は、弁護士に相談するのがベストです。弁護士であれば、個々の状況に合わせた解決方法を提案してもらえて、根本的な問題解決にもつながります。貸主や不動産管理会社と家賃滞納のことでトラブルになっている場合は、依頼者の代理人として交渉や必要な手続きを行うことで、依頼者に有利な条件で解決できる可能性もあります。初回の法律相談料を無料としている法律事務所も多いので、とりあえず無料相談に行って、話を聞いてもらうだけでも良いでしょう。

5、まとめ

借金は、必要に迫られてしてしまう場合もありますが、単に欲しいものを買うためだけにしてしまう場合もあります。しかし、家賃滞納をしてしまうほど借金がかさんでしまうと、精神的に追い詰められてしまうこともあるでしょう。

そのようなときは、ベリーベスト法律事務所・静岡オフィスがご相談を承ります。家賃トラブルの経験豊富な弁護士がお客様から現在の状況についてお話を伺い、家賃滞納を解消するために最適な解決方法をご提案いたします。初回相談は60分間無料ですので、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています