交通事故で脊髄損傷に! 適切な後遺障害等級と賠償金を獲得するためには?

2021年07月01日
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交通事故で脊髄損傷に! 適切な後遺障害等級と賠償金を獲得するためには?

静岡市の発表によると、令和2年に静岡市で発生した人身事故の件数は3592件と、前年に比べて802件減少していました。負傷者の数は4280人で、こちらも前年より1029人の減少となっております。

全体の交通事故件数が減少しているといっても、交通事故の被害に遭う可能性は誰にでもあります。また、ケガの程度によっては、今後の生活や仕事に深刻な影響をもたらすような後遺症が残ってしまうおそれすらあります。

本コラムでは、交通事故によるケガのなかでも特に重篤な後遺症が残ってしまう可能性の高い「脊髄損傷(せきずいそんしょう)」の概要と、その場合に認定される可能性のある後遺障害等級や弁護士に依頼するメリットについて、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスの弁護士が解説いたします。

1、脊髄損傷とは

まず、「脊髄損傷」とはどのようなケガであるかについて、解説いたします。

脊髄損傷とは、その名のとおり「脊髄に損傷が生じること」を指します。
脊髄は、交通事故のほかにも、スポーツや仕事中に転倒や転落をしてしまうなど、強い衝撃を受けることで損傷する場合もあり、一度損傷してしまうと回復が非常に困難です。

脊髄を損傷してしまった場合、損傷部位がつかさどっている神経の領域より下の部分への神経伝達が困難ないしは不能になってしまい、身体に麻痺や感覚障害が生じてしまうことがあります。
一般的には、損傷した脊髄の箇所が頭部に近いほど、症状の範囲は広がり、その程度も深刻になります
特に、頸部(首)の脊髄を完全損傷してしまうと上半身・下半身の両方が麻痺してしまう可能性もあり、車椅子や寝たきりの生活を余儀なくされるなど、重篤な後遺症が残るおそれがあります。

2、脊髄損傷で認定される可能性のある後遺障害等級

次に、脊髄損傷で認定される可能性のある後遺障害等級について、解説いたします。

まず、自力での生活が困難になり、介護を要するほどの重篤な症状が残った場合、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として1級1号(別表第1)又は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」として2級1号(別表第1)に認定される可能性があります。

一方で、身体に残った麻痺などの影響で、介護を要するほどのものではないものの服することのできる労務の種類は限られる、という場合もあります。
この場合には、服することのできる労務の種類がどれほど制限されるかによって、以下のとおり、後遺障害の等級が変わってきます。

  • 3級3号
    神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  • 5級2号
    神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 7級4号
    神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 9級10号
    神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの


その他、服することのできる労務の種類自体が制限されるほどではないものの、神経症状が残存してしまった場合には、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級13号が認定される可能性があります。

3、適切な賠償金を受け取るためには弁護士に相談を

交通事故によって後遺症が残ってしまった被害者が「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」として受け取ることのできる損害賠償額は、認定される後遺障害等級によって、大きく変わってきます。

「後遺障害慰謝料」とは、後遺障害が残ってしまったことによって被る精神的苦痛を補償する金銭です。
また、「逸失利益」とは、後遺障害が残ってしまったことで、将来得られるはずの収入が得られなくなった場合の減収部分をいいます。

そして、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」の賠償金を受け取るためには、その前提として、後遺障害等級の認定を受けることが必要となります

以上を前提に、以下では、交通事故の被害者が適切な賠償金を受け取るために、弁護士への依頼を検討すべき理由について、解説いたします。

  1. (1)適切な後遺障害等級の認定が期待できる

    後遺障害等級の認定を受けるためには、「損害保険料率算出機構」(自賠責損害調査事務所)という審査機関に必要書類を提出して、申請を行う必要があります。
    申請の方法には、「事前認定」と「被害者請求」の二通りの方法が存在します。

    事前認定は、加害者側の保険会社が提出に必要な書類や資料を準備して、申請を行う方法です。
    被害者本人が申請書類を準備しなくてよいという点がメリットとしてある一方、申請する任意保険会社はあくまで加害者側の立場であるため、書類の内容が被害者側にとって有利なものになるとは限らないという点がデメリットです。
    事前認定では、被害者自身の利益を十分に考慮した申請は期待できないといえるでしょう。

    被害者請求は、被害者の側で書類や資料を準備して、申請の手続きを行う方法です。準備や手続きに労力がかかるという点はデメリットとなります。
    しかし、適切な等級が認定されるために念入りに書類を準備できるということは、大きなメリットとなります。

    弁護士に相談すれば、一般的には証明することが難しい神経症状の場合でも、後遺障害診断書の内容の工夫や、必要な検査を行うように案内するなど、後遺障害等級が認定されやすくなるような方法についてアドバイスを得ることができます。

    また、すでに事前認定によって等級が認定されている場合でも、認定の結果に不服であれば「異議申立て」を行うことができます。弁護士であれば、認定結果のどの点がどのように問題であったかを指摘しつつ、専門的な知識に基づいて異議申立てを行うことができます。

  2. (2)賠償金の適切な交渉が期待できる

    脊髄損傷によって後遺症が残った場合には、適切な賠償金について、根拠とともにしっかりと主張していくことが重要となります。

    後遺障害等級が認定された場合は、ケガによって被った精神的苦痛に対する賠償金である「傷害慰謝料」とは別に、上記のとおり「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」も請求することができます。
    慰謝料の金額は、「自賠責基準」や「任意保険基準」で算定するか、「裁判所基準」で算定するかによって、大きく異なります。そして、保険会社は、最も高額な裁判所基準での交渉には、最終的に裁判を起こすことのできる弁護士でないと応じないのが一般的です。

    また、逸失利益は、等級ごとに定められている「労働能力喪失率」に事故前の被害者の収入や、被害者の年齢などを考慮しながら算出されます。しかし、逸失利益を正確に計算するためには、後遺障害の種類や被害者の収入関係などのさまざまな要素を考慮する必要があります

    交通事故の示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、逸失利益についても様々な事情や特徴を総合的に考慮したうえで計算し、考え得る最大限の金額で交渉することができます。

    適切な賠償を受け取るためにも、交通事故の被害に遭ったら、なるべく早い段階で弁護士に相談のうえ、保険会社との交渉を依頼するとよいでしょう。

4、まとめ

交通事故で脊髄を損傷してしまった場合、その後の生活に不便が生じてしまうだけでなく、仕事をしたり日常的な動作を行ったりすることすらままならなくなるような重篤な後遺症が残るおそれもあります。

これまで解説してきたとおり、脊髄損傷によって後遺症が残った場合に、加害者に適切な賠償をさせるためには、その前提として、後遺障害等級の適切な認定を受けることが重要になります。

ベリーベスト法律事務所には、交通事故の示談交渉や後遺障害等級の認定申請や異議申立ての経験が豊富な弁護士が、多数在籍しております。
静岡県や近隣県で交通事故にあわれて、脊髄を損傷してしまった方、そのご家族の方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスの弁護士にまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています