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認知症の親が高額商品の契約をしてしまった! 家族が契約解除できる?

2023年09月28日
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認知症の親が高額商品の契約をしてしまった! 家族が契約解除できる?

もし、認知症の親が、家族の知らないうちに高額商品の契約をしてしまった場合、契約解除(解約)はできるのでしょうか。契約を解除できる場合、どのような方法があるのでしょうか。

本コラムでは、契約解除の方法やトラブルを回避する方法などについて、弁護士が解説いたします。

認知症の家族が結んでしまった契約の対処方法は三つあります。
クーリングオフ制度を利用する方法、意思能力のない事を主張する方法、および消費者契約法違反を主張する方法です。
以下では、契約を解除する方法についてそれぞれ具体的に紹介したのちに、成年後見人制度や弁護士に依頼すべきケースを解説します。

1、契約解除する方法① クーリングオフを利用する

クーリングオフはどのような制度なのでしょうか。また、どのように手続きをすればよいのでしょうか。

  1. (1)クーリングオフ制度とは

    クーリングオフ制度とは、契約をしたあとに頭を冷やして考える時間を消費者に与え、その消費者が不要と判断したときには一定期間内に無条件で契約申込みの解除や契約解除ができる制度です。訪問販売や電話販売などの場合、心の準備をしていないときに急に勧誘され、よく考えずに契約してしまったケースは少なくありません。そういった取引を守らせることは消費者にとって酷なため、契約解除できるようにしてあるのです。

  2. (2)クーリングオフできる期間

    クーリングオフできる期間は、契約書面を受け取った日から以下の日数が経過するまでです。日数は取引形態により異なりますので、詳しくは以下の表を参考にしてください。

    訪問販売(キャッチセールス、アポイントセールス含む) 8日間
    電話勧誘販売 8日間
    特定継続的役務提供契約(エステ、語学スクール、結婚相手紹介サービスなど) 8日間
    連鎖販売取引(マルチ商法) 20日間
    業務提供誘因販売取引(内職商法、モニター商法など) 20日間
    訪問購入(自動車、家具、書籍などは除く) 8日間
  3. (3)クーリングオフできないものもある

    訪問販売などでも、以下のようなケースではクーリングオフができません。(事案によっては、クーリングオフができる場合もありますので、弁護士にご相談ください。)契約の際は十分に注意するようにしましょう。

    • クーリングオフ期間を過ぎた場合
    • 営業用・仕事用のために契約した場合
    • 健康食品や化粧品の使用済み分
    • 現金決済で代金が3000円未満の商品・サービス
    • 葬儀、自動車などクーリングオフの適用対象外のもの
    など
  4. (4)クーリングオフの手続き方法

    クーリングオフしたいときは、クーリングオフ期間内に書面やメールなどの電磁的記録で販売業者に通知します。クレジットカード決済をした場合は、カード会社にも通知しましょう。クーリングオフした証拠を残すために、発送する前にコピーを取り、特定記録郵便や簡易書留など記録の残る方法で郵送されることをおすすめします

2、契約解除する方法② 意思能力のないことを主張する

クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合は、認知症のために意思能力がなかったことを主張する方法もあります。意思能力とはどのようなものでしょうか。

  1. (1)意思能力のない者による法律行為は無効

    意思能力とは、自分がした行動がどういう結果になるかを認識して正しく意思決定をする精神能力のことです。民法では以下のように定められています。

    民法 第3条の2
    法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。


    ここでいう「行為」とは、契約締結などの法律行為のことです。認知症の方は、判断能力が衰えていることが殆どです。そのため、認知症の方が、自分で商品やサービスの契約をした場合には、意思能力がないとしてその契約が無効なることがあります。意思能力があるか無いかは、個々の契約ごとに判断します。

  2. (2)意思能力がない者の契約行為は無効

    契約時、契約した者に意思能力がない場合には、その契約は無効になります。この場合、契約者本人が認知症で意思能力に欠けているため無効であることを家族が販売業者に伝えて、商品を返せば、販売業者から代金を返してもらえるでしょう。

  3. (3)意思能力のないことを主張する方法

    契約当時、契約した本人は認知症で意思能力がなかったということを主張するには、証拠が必要です。医師の診断書のほか、医師や看護師、介護士の意見書などを添えて契約者本人に意思能力がなかったことを文書で販売業者に伝えましょう。

3、契約解除する方法③ 消費者契約法違反を主張する方法も

訪問販売業者が来たときに強引に契約を結ばされるなど、勧誘方法が消費者契約法に違反するものであった場合、消費者契約法違反を主張する方法もあります。

  1. (1)消費者契約法とは

    消費者契約法とは、消費者と販売業者の情報や交渉力の格差によって、消費者が困惑・誤認したときに消費者の利益が損なわれないよう保護するための法律です。消費者契約法では、消費者と販売事業者により不当な勧誘を受けたときの契約の取り消しや、契約書面に不当な契約条項があるときの契約の無効が定められています。

  2. (2)認知症など判断能力の低下した高齢者が取り消し・無効にできる契約とは

    消費者保護の観点から、認知症など判断能力の低下した高齢者が狙われやすい以下のような契約については、取り消しすることが出来ます。また、消費者に不利な条項は無効になります。

    <取り消しできる契約>
    • 重要事項について事実と異なることを言われた
    • 契約者本人にとって不利になることを言われなかった
    • 通常の消費量を超える量を購入させられた
    • 「帰ってほしい」とお願いしても帰ってくれない
    • 帰りたいのに契約するまで帰してもらえない
    • 判断力が著しく低下した高齢者が現在の生活維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおって契約を迫った
    など

    <無効となる契約条項>
    • 事業者は損害賠償責任を負わないとするもの
    • 消費者はいかなる理由があっても契約を解除できないとするもの
    • 成年後見制度を利用すると契約解除になるもの
    • 平均的な損害額を超えるキャンセル料を請求するもの
    • 消費者の利益を一方的に害するもの
    など
  3. (3)消費者契約法で認められている時効とは

    消費者契約法では、契約の取消しは、「追認できるときから1年、契約締結から5年を経過したとき」と時効が長めに設定されています。クーリングオフ期間を過ぎても、消費者契約法での時効期間内であれば、消費者契約法違反による契約の取消しや条項の無効を主張することもできます。

4、契約トラブルを回避する成年後見制度とは

認知症など判断能力の低下した高齢者について、契約トラブルになるリスクを避けるために、成年後見制度を利用する方法もあります。

  1. (1)成年後見制度とは

    成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が欠けている方の生活を成年後見人と呼ばれる方が支援する制度です。成年後見人は、主に被成年後見人(認知症の高齢者など)の財産管理や医療・介護にかかる契約締結などの役割を担います。成年後見人に就任すると、まず本人の財産目録と本人収支表(毎月もしくは毎年の収入、支出の見積もり)を作成して家庭裁判所に提出します。その後にも、家庭裁判所に対する重要事項の報告や年に1回程度の定期報告などを行う場合があります。
    成年後見制度には家庭裁判所に後見人を選任してもらう「法定後見制度」と自分の信頼できる人を後見人に選ぶ「任意後見制度」の種類があります。

  2. (2)3つの法定後見制度

    法定後見制度は、認知症などで判断能力が低下したときに、裁判所に申し立てをすることによって成年後見の開始が決められる制度です。法定後見制度には、被後見人の判断能力の程度により、成年後見・補佐・補助の3つの種類があります。後見人、保佐人、補助人は、裁判所が選任します。そのうち、後見人は本人を代理して契約などの法律行為が行えるようになっていますし、本人の行った契約を取り消すことができます。

  3. (3)任意後見制度

    任意後見制度とは、本人の判断能力が低下してしまう前に、本人が自ら、あらかじめ信頼できる方を後見人に選任し、財産管理や生活面の事務について委託や代理をしてもらう委任契約を結んでおく制度です。実際に高齢者本人が認知症などにかかって判断能力が低下したときに、本人や配偶者、4親等内の親族、任意後見人が家庭裁判所に後見監督人の選任を申し立てます。その後、専任された後見監督人のもとで、後見人が財産管理などの事務を行います。

  4. (4)成年後見制度の注意点

    成年後見制度には以下のような注意点があります。

    1. ① 後見開始前に行った契約は無条件に無効主張をできない
      認知症患者など本人が後見開始前にひとりで結んだ契約については、後見人は無条件では無効の主張をできません。しかし、契約当時に本人の意思能力がなかったことを理由に契約の無効を主張することは可能です。

    2. ② 高額な買い物には家庭裁判所に事前相談が必要?
      後見人は、本人を代理して契約を行うことが出来ますし、本人が行った契約を取消すことが出来ます。但し、食料品・日用品の買い物は取消すことが出来ません。また、後見人は、本人のためであっても、本人の居住用不動産を売却、賃貸、賃貸借契約の解除、抵当権などの設定をする際には、事前に家庭裁判所の許可を得る必要があります。
      また、高額な商品・サービス(本人を送迎するための車や、バリアフリー化するためのリフォームなど)を購入するときにも、念のため事前に家庭裁判所へ相談したほうがいいでしょう。

    3. ③ 後見人の辞任には家庭裁判所の許可が必要
      後見人が辞任したいときは、家庭裁判所の許可が必要です。また、辞任には病気や高齢化、遠隔地への転居など正当な理由が必要となりますので注意が必要です。

5、親が認知症になったら弁護士に相談した方がよいケース

親が認知症になってしまったら、日常生活のあらゆる場面で心配なことが増えます。弁護士に相談したほうがよいこともありますが、どのような場合に相談すべきなのでしょうか。

  1. (1)家族が遠方に住んでいるケース

    まずは、家族(特に子ども)が遠方に住んでいる場合です。子どもはそれぞれ仕事や家庭を持っていて、親が認知症になっても頻繁には帰省できないケースも少なくありません。認知症の高齢者は悪徳な訪問販売業者に狙われやすいため、万一のときに備えて弁護士に相談しておいたほうがよいと言えるでしょう。

  2. (2)土地建物など高額な財産を所有しているケース

    また、認知症の親が土地建物など高額な財産を所有しているときも、弁護士に相談するほうがよいでしょう。不動産を所有していると、認知症の親が悪徳業者に騙されて安価に売却してしまったり、親にとって必要な不動産を売却処分してしまったりする可能性もあるためです。親の財産管理をどうすべきかを弁護士に相談し、アドバイスをもらっておけば、トラブルが生じるリスクを減らすことができます。

  3. (3)成年後見制度を利用したいケース

    親が認知症になってしまったために財産管理などを他の誰かに任せたいときには、成年後見制度の利用を検討するとよいでしょう。そのときも弁護士に相談することで、後見人を誰にすべきかアドバイスを受けられますし、手続きなどもその弁護士に依頼することも可能です

6、まとめ

認知症など判断能力の低下した高齢者を狙う悪徳販売事業者による消費者被害はあとを絶ちません。自分の親が高齢になったときには、遠方に住んでいても連絡を毎日とるなどして生活の様子をチェックすることが必要です。

認知症を抱えた家族や高齢の両親がご心配な場合は、ベリーベスト法律事務所 静岡オフィスまでご連絡ください。生活面に関すること、財産管理に関することなど、何でもご相談に応じます。どんなに些細なことでもかまいませんので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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